05﹃ヤシロの苛⽴ち﹄
﹁……蓋を︑開ける︒…………まだ︑遅い︒これでは︑ダメ﹂
﹁頑張てください︑マグダさん ︕こう︑⾓を持 て⼿⾸をひねるとスム ズに開くのではないでしうか!?﹂
﹁……やてみる︒…………開ける﹂
﹁凄いです ︕今の蓋開けはこれまでで⼀番スム ズでした︕﹂
弁当の蓋を開けるマグダに拍⼿を贈るジネト︒数⽇前より始ま たこの光景も︑もはや⾒慣れた⽇常となりつつある︒
何を隠そうこれはマグダが⼀⼈で狩りに⾏けるようになるための﹃修⾏﹄なのである︒…… なんの修⾏してんだよ︒
も
﹁空腹時にロスタイムなくお弁当を開けられれば︑獲物は丸ごと売れるからね︒蓋を開ける修⾏は理に適てると思うよ﹂
﹁最初から開けて狩りをすりあいいだろうに﹂﹁何を⾔てるんだい︑ヤシロ︒お弁当は︑開ける瞬間が⼀番楽しいんじ ないか︒その楽しみは⾷べる直前に味わうべきだよ︕﹂
などと⼒説するエステラだが︑お前︑ち と前まで﹁冷えた料理なんて美味しいのかな﹂
て弁当否定派だたじねか︒すかり⼿のひらを返しやがて︒
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﹁マグダさん︑それです ︕今の蓋開けは素晴らしい動きでした︕﹂
﹁……もう⼀度︒今の感覚を忘れないうちにやてみる﹂
﹁はい ︕頑張てください︕﹂
なんともずれている気がするのだが……
だがしかし︑この﹃修⾏﹄が功を奏したのか︑マグダはこの⽇から⼀⼈で狩りに出るようになり︑そして三⽇連続で獲物を仕留めて帰 てきたのだた︒
狩猟ギルドへ売りに⾏く前に︑わざわざ獲物を俺たちに⾒せるため陽だまり亭に戻 てくるマグダに︑ジネトはいちいち凄い凄いと称賛を贈 ていた︒なんか︑獲物を⾃慢しに来るのてネコの習性みたいだなと︑俺はそんなことを思う程度だたのだが︒
﹁マグダさんならきと︑すぐに⽬標を達成してしまいますよね︒凄いです︕﹂
親バカも真⻘なほど⼤はしぎをするジネト︒それがフラグだたのかは分からんが……
やはり世の中はそんなに⽢くはなかた︒
それは︑モマ トから受け取てきたアホほど⼤量な⽟ねぎを庭に積み︑さこれから陽だまり亭の⾷料庫へと運び⼊れるぞという時に起こた︒
﹁マグダさん︑どうしたんですか!?﹂
突然ジネトが駆け出す︒その先には︑うな垂れるマグダが⽴ていた︒
狩りに出て数時間︒戻てくるにはあまりに早過ぎる︒獲物も持 ていないし︑陽だまり亭の庭に⼊る⼿前で⽴ち⽌まり微動だにしないのもおかしい︒
マグダの様⼦から︑何かトラブルがあたのは明⽩だた︒
ジネトはそれを︑怪我や病気だと思たらしく︑駆け寄るなりマグダの体を隈なく⾒回し始
める︒
だが︑違う︒
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マグダには⽬⽴た外傷はなく︑何よりマグダの⽿がジネトを避けるようにぺたんと寝てし
ま ている︒あれは︑ジネトに対して⾔い難いことがある証拠だ︒
﹁マグダ﹂
声をかけると︑マグダの肩が微かに震えた︒
﹁狩りはどうした ︖ 獲物は︖﹂ 戻てきたということは︑今⽇の狩りは終了したということだ︒
﹁……獲物は︑ない﹂
抑揚のない︑なんの感情も感じられない︑平坦な声が返事を寄越す︒
それは︑狩猟ギルドへ報告をしていた時の声によく似ている気がした︒
﹁……マグダは︑…………無能︖﹂
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不意にマグダの⼝からそんな⾔葉が漏れる︒
問いかけるように発せられたその⾔葉に︑ジネトが息をのむ⾳がはきりと聞こえた︒⾒る
と︑ジネトはあまりのシ クに顔を強張らせ固ま ていた︒
しかし︑マグダは相変わらずの無表情だ︒
いつもと同じ表情︒表情と呼ぶにはあまりに起伏がなく︑感情が読み取れない︒だというのに……︑俺にはそれが︑泣いているように⾒えた︒
﹁理由を⾔え﹂
これまでマグダが⼀度も求められなかたであろうことを︑俺は尋ねる︒
なぜ狩りに失敗したのか︒
﹃⾃分が無能だから﹄などという⾔い訳は通⽤しない︒マグダは狩りが出来る︒この数⽇でマグ
ダ⾃⾝が証明してみせたことだ︒
ならば︑なぜ狩りに失敗したのか︒もと⾔うなら︑なぜ﹃狩りを中⽌したのか﹄だ︒狩りに出て成果がなか たというには戻 てくる時間が早過ぎる︒何かがあ たのだ︒その
﹃何か﹄を︑俺は尋ねる︒
﹁……狩猟ギルドにおいて︑⾔い訳は最も忌むべき⾏為﹂
﹁ここは陽だまり亭で︑俺は狩猟ギルドの⼈間じ ね︒そして︑今現在はお前の仕事を管理する⽴場にいる︒現段階において︑マグダの仕事に関するすべては狩猟ギルドのルルよりも俺の
やり⽅が最優先される︒違うか︖﹂
﹁………………違わない﹂
たぷりと考えた後で︑マグダははきりと答える︒
ここにいる以上︑俺のやり⽅に従 てもらう︒マグダも︑それを了承したとみていいだろう︒双⽅の合意を確認したところで︑再度問う︒
﹁何があた︖﹂
﹁…………﹂
マグダは無⾔で肩に提げた袋から弁当箱を取り出した︒
﹁これは……﹂
息をのみ︑ジネトが⾔葉を漏らす︒
か
弁当箱は︑⾒るも無残に破壊されていた︒
何も⾔わないマグダから弁当箱を取り上げ︑俺は中⾝を確認する︒
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どれも⼝を付けた様⼦はない︒ただ︑⼀度地⾯に落ちたものを搔き集めて⼊れ直したのか︑砂
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が混じり︑形もぐちぐち に詰め込まれていた︒
そして俺は発⾒する︒おにぎりにくきりと刻みつけられた﹃⾜跡﹄を︒
﹁……酷いです︒誰がこんなことを……﹂
さすがのジネトも気が付いたようだ︒これは︑マグダがう かり弁当を零したなんて事故ではなく︑誰かが悪意を持 て⾏た暴挙であることに︒
﹁……覆⾯を着けた︑謎の男たち︒突然背後から襲われて︑お弁当をダメにされた︒……マグダの油断﹂
あくまで⾃分のせいだと︑マグダは⾔う︒油断だと︒
﹁……マグダは︑⼀⼈では何も出来なかた﹂
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⾃分を責めるマグダを︑ジネトが⼒任せに抱きしめる︒
﹁……店⻑︒お弁当……ごめんなさい﹂
﹁いい……んです︒マグダさんが無事なら︑それで……﹂
虚ろなマグダの瞳と︑⼩さく震えるジネトの背中︒そんなものを⾒せられて︑俺は⼼の中に
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﹃ある⼀つの感情﹄がふつふつと沸き上がてくるのを感じていた…… ﹃こんな光景を俺に⾒せやがたことを︑必ず後悔させてやる﹄──という憤りを︒
弁当を狙てきたということは︑マグダが弁当のおかげで狩りを成功させていることを知て
いる者の犯⾏で間違いないだろう︒
⽤意周到な妨害⼯作を仕掛けてきてやがるところを⾒ると︑⾨の前まで俺たちが付いてい
たとしても︑森の中で襲われる可能性が⾼い︒
弁当を死守したとしても︑今度はそいつらに﹃狩り﹄を邪魔されるだろう︒はたまた︑﹃⾚モ
ヤ﹄使⽤後を狙て何かをされる可能性もある︒
結局︑どんな対策を⽴てようが後⼿に回てしまう︒ならば︑こちらが取るべき⼿段はただ⼀つ︒
﹁ぶ潰しに⾏くぞ︑そいつらを﹂
妨害⼯作を⾏ているヤツを直接叩く︒⼆度と妨害させないように︒

幸い︑⼼当たりはある︒会いに⾏てやるさ︒
⼈が⾒出した活路を嬉々として潰しに来るような輩は…………地を這いつくばて惨めに苦しみもがく姿こそが相応しい︒
﹁……ヤシロ﹂
熱暴⾛を始めそうな脳みそに︑冷却⽔みたいな声が浸透してくる︒
﹁……怒て︑いる︖﹂
何か不思議なものでも⾒るような⽬で︑マグダが俺を⾒上げている︒
乏しい表情ながらも︑そこから感じる雰囲気は先ほどとは変わていた︒さきまでの︑泣き出しそうな⾊は薄れていた︒
﹁……マグダの︑ために︖﹂
あまりに純粋な瞳で⾒つめられ︑なんとなく︑⾔葉に詰ま てしま た︒
……そんな⽬で⾒るな︒そういうんじねよ︒
﹁お前の狩りが成功すれば︑陽だまり亭はその魔獣の⾁を⼿に⼊れられる︒となれば︑売り上げも上がるだろうし︑そうすれば俺の利益も⾃ずと上がる﹂
魔獣の⾁を使た料理を出せば︑それなりの値段を付けても売れてくれそうだ︒客単価が上がれば楽して利益を上げることが出来るだろう︒
しかも︑その魔獣の⾁は︑マグダが狩 てさえくれば無料で⼿に⼊るのだ︒
こんなにおいしいことはない︒
﹁だからな︑マグダの狩りを邪魔するてことは︑俺の利益を奪う てことになるんだ︒看過出来るわけねだろ︑そんなもん﹂俺の⾦︑俺の時間︑俺の⾃由︑俺の居場所を奪おうとするヤツは︑どんな⾔い逃れをしようが
明確に俺の敵だ︒
そして俺は︑俺の敵に容赦はしない︒ぶ潰してやる理由は︑それだけで⼗分だ︒だから別に︑マグダがどうとかではない︒
﹁……ヤシロは︑いい⼈﹂
マグダの尻尾が︑うねうねと⼩刻みに震えている︒ネコがじ れつく直前に⾒せる︑﹁友好﹂の動作だ︒別名﹁遊べの合図﹂とも⾔えるが︒
そうまで分かりやすく懐かれると︑やり難いというか……照れるんだが︒
﹁それにアレだ﹂
恥ずかしげもなくジ と⾒つめてくるマグダから視線を外し︑俺は砂利まみれの弁当を軽く掲げてみせる︒
﹁俺は︑⾷い物を粗末にするヤツが⼤嫌いなんだよ﹂
事実だけを述べ︑俺はダメになた弁当を持 て裏庭へと向かた︒堆肥に混ぜておけば︑こ
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の弁当も無駄にはならないかもしれないからな︒
どんなものでも︑有効的な使い⽅を⼼がければそのものが持つポテンシル以上のものを引き出すことだて可能なのだ︒
……だからま ︑ち と⼀肌脱いでやるかね︒
あくまで︑俺の利益のために︒
真先に容疑者として浮かび上がたのは︑⾔うまでもなく狩猟ギルドの連中だ︒
マグダが狩りを出来るようになた理由を知ており︑マグダの狩りを邪魔する理由がある者はそう多くない︒
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動機は︑俺との賭けになんとしてでも勝ちマグダを追放したいとか︑マグダが功績を挙げるのが気に⼊らないとか︑そんなところか︒
狩猟ギルドに⾏くと﹁代表は解体部屋にいる﹂と⾔われ︑そちらへ向かう︒
﹁よ︑来たか﹂
俺を⾒たウセの第⼀声はそんな⾔葉だた︒
﹁今⽇はお前も付いてきたのか︒マグダはどこだ ︖すぐ査定してやるぜ﹂
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部下に向かて⼿を振り︑査定の準備を始めさせる︒
そして︑俺の背後をひとしきり気にして︑マグダがいないことに眉を顰める︒
﹁まさか︑持 てこれねような⼤物を仕留めたてんじ ないだろうな︖﹂戦慄と興味︒そんな⼆つの感情がウセの頰を引き攣らせる︒
﹁マグダがそんな⼤物を仕留められると思てるのか︖﹂
﹁バカ︑お前︒あいつはまだガキだが︑トラ⼈族なんだぞ ︖トラ⼈族なら︑何をしでかしても不思議じねさ︒アノ⽋点がなくなたんなら︑尚更な﹂
そう語るウ セは︑強敵を⾒つめるアスリトのような顔つきをしていた︒嬉しくも悔しい︒だが認めずにいられない︒そんな感じの表情を︒
﹁で︑マグダはどこにいるんだよ︖﹂
﹁来てない︒今⽇は狩りに失敗したんだ﹂
﹁は !? 何やてんだよ︑あいつは︕﹂
そして︑⾒慣れた極道チクな強⾯をさらす︒
﹁ここ数⽇︑連続で成功してたから油断しやがたんだな︒新⼈にありがちなんだ︑⾃分は腕がいいと⾃惚れてくだらね ポカをやらかしやがる︒それでなんだ ︖ミスしたからビビ てお前を寄越した てのか︖ おい︑マグダを連れてこい ︕ 俺がそのひん曲が た根性を叩き直してやる ︕つうか︑まだこんな時間じ ね か ︕ 失敗したなら⽇が暮れるまで粘て野ウサギの⼀⽻でも捕まえてくるのが狩⼈だろうが ︕あ ︑ムカつく ︕ 何やてんだ︑アイツはよ
︕﹂
浮かんだ⾔葉を怒りに任せて喚き散らし︑近くにあたテブルを蹴り⾶ばす︒ウセの怒りは本物だ︒
以前︑マグダを叱責していた時と同じ︑相⼿を叩き潰すための怒り⽅だ︒
も
﹁おい ︕ 査定はなしだ ︕今⽇は獲物がないんだとよ︕﹂
﹁は !?﹂
﹁なんすか︑それ!?﹂
﹁何やてんだ︑アイツ!?﹂
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ウセの⾔葉に︑狩猟ギルドの⾯々も不満を漏らす︒
査定のために進めていた準備の⼿を⽌め︑あからさまな怒りを顔に浮かべている︒演技には⾒えない︒
これでも俺は︑⼈を⾒る⽬がある⽅だ︒特に︑噓吐きの仮⾯はすぐに⾒破れる︒特有の歪さがあるからな︒そんな連中を何百⼈と⾒てきた︒その俺が断⾔する︒こいつらは噓を吐いていない︒狩猟ギルドは︑シロだ︒その証拠に──
﹁な︑ウセ﹂
﹁んだよ!?﹂
﹁お前︑巨乳⼤好きだろ﹂
﹁ぶふ !?﹂
﹁ジネトの胸︑何度もチラ⾒してたろ︖﹂
﹁な︑ななな︑なに⾔てんだよ︑お前!? お︑お俺はそそそんなもん別に…… !?﹂
﹁﹃精霊の……﹄﹂
﹁わ ︕やめろ︑バカ ︕男なら誰だて気になるだろうが︑あんなデカい胸 ︕お前だていつもチラ⾒してんだろ!?﹂﹁俺はいつもガン⾒だ ︕﹂
﹁……お前︑サイテだな﹂
──と︑こいつは噓が吐けない男なのだ︒頭が悪いからすぐに顔に出る︒
こんなヤツが︑この俺を騙せるほど巧妙な噓を吐けるとは思えない︒
つか︑誰がサイテだ︑バカモノ︒男は黙 て⾕間をガン⾒だろうが︒
﹁マグダの弁当が狙われた﹂
その⼀⾔で︑ウセの表情に新たな感情がはきりと表れた︒
苛⽴ち──怒りとは種類の違う︑粘こくて煩わしい︑振り解けないまま鬱積され続けたストレスを思わせるような根の深い苛⽴ち︒
﹁は …… たく︒またあいつらか﹂
どうやら︑⼼当たりがあるようだ︒
そしてそれはおそらく︑俺の思い浮かべている第⼆容疑者に合致していることだろう︒
﹁⽜飼いか︖﹂
﹁だろうな︒他に考えられね﹂
マグダが狩りに失敗すれば︑⽜飼いへの賠償が出来なくなる︒それは⼀⾒⽜飼いにと て不利益なことのように感じるが︑ヤツらの⽬的が賠償ではなく︑﹃狩猟ギルドへの嫌がらせ﹄であるならば納得のいく動機と⾔える︒
つまり︑ヤツらは賠償など求めてはいないのだ︒ただただ︑狩猟ギルドの⾜を引張りたい︒統括裁判所とやらに告訴して︑営業停⽌にでもしたいのだろう︒
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﹁⽜飼いの連中は︑⽜⾁の売り上げが伸びないのは俺たち狩猟ギルドのせいだと⾔てやがるんだ﹂
﹁魔獣の⾁に味で負けるからか︖﹂
﹁あ︒値段が違えば購買層も変わるんだが︑あいつらは狩猟ギルドが市場を荒らしていると⾔
て譲らね んだ︒…… たく︑腐た根性をしてやがるぜ﹂
腐た根性か︒
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ま ︑テメのミスで⽜を逃がしておいて︑マグダに賠償だなんだと求めるような連中だ︒性根など︑とうに腐り落ちているのだろう︒
﹁潰さないのか ︖ ⼒があるんだろう︑狩猟ギルドには﹂
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﹁あのな ……感情に任せて弱者を潰してたら︑ウチのギルドの信⽤が地に堕ちる つの ︕お前みたいに⾃由に動けね んだよ︒組織がデカ過ぎると︑逆にな﹂
ま 確かに︑デカい看板が邪魔をするなんてのはよくあることだ︒⼤企業がクレ マ をいちいち告訴しないのと同じだな︒キリがない上に評判が悪くなる︒
もとも……度が過ぎると全⼒で潰しにかかるんだけどな︒
﹁ウチのことより︑今はお前だろ︒どうすんだ ︖もう時間はあまりねぞ﹂
マグダの狩りが邪魔されれば︑狩猟ギルドも迷惑を被る︒そんな批判めいた視線を俺に向けるウセ︒他⼈事みたいな顔しやがて︒
﹁⽜飼い共は他⼈の⾜を引張ることに関しち 天才的だ︒証拠なんか残さねし︑⾔い逃れの材料は腐るほど⽤意してあるだろう︒乗り込んだところでしらばくれられて終わりだぞ﹂
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ジネトが怪我したことへの損害賠償からは逃げておきながら︑マグダに対してはき ちり賠償請求するような連中だ︒まともに取り合うとは思えない︒
確たる証拠を突きつけて︑逃げ道を完全に塞いでやる必要があるだろう︒さて︑どうしたものか……
﹁おい﹂
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⽜飼い共を嵌める算段を始めた俺に︑ウセが嫌そうな顔で声をかける︒
﹁悪巧みは帰 てからにしてくれ︒顔が怖 んだよ︑お前﹂
﹁お前に⾔われたくねわ﹂
お前に⽐べたらチワワみたいに可愛いつうの︕あ︑そうだ︒こいつらを利⽤させてもらおう︒
﹁な︑巨乳⼤好きウセ・ダマレ﹂
﹁ おおおい ︕⼈聞きの悪いことをデカい声で⾔うんじねよ︕﹂
こんなことで頰を染めるなよ︑いい歳したオサンが︒彼⼥いない歴=年齢か︖
﹁巨乳好きに悪いヤツはいないよな︖﹂
﹁なんの話だよ!?﹂
﹁⽜飼いの嫌がらせを⽌めてやるからよ︑お前らち と協⼒しろ﹂
﹁……もうちいまともな誘い⽅はなかたのかよ︒ たく﹂呆れ顔ながらも⽿を貸したウセに︑俺は商談を持ちかける︒あ︑そうだ︒あとでエステラにも話しに⾏かなき な︒﹃領主の許可証﹄を⼀部︑⼤⾄急⽤
意してくれて︒
そして翌⽇︒
俺はマグダに付いて四⼗⼀区へと来ていた︒
﹁……お弁当︑マグダが持つ︖﹂
﹁いや︑⼤丈夫だ﹂
肩に⾷い込むデカいカバンの中には︑ジネト特製の弁当が﹃⼗⼈前﹄⼊ている︒
間もなく街⾨がある広場へと出る︒そんな︑⼈通りの少ない⼩道を歩いていた時︑そいつらは現れた︒
頭からすぽりと怪しいマントを被り︑覆⾯で厳重に顔を隠した男が六⼈︒突然俺に襲いかかてきやがた︒⼿にはメイスや鉈が握られている︒
マグダが臨戦態勢に⼊るが……覆⾯の中の⼀⼈が⼸を構え︑俺を狙ているのを⾒つけて︑動きを⽌める︒なんとも分かりやすいその脅しは︑功を奏したわけだ︒
﹁おい︑やめろ ︕こいつは﹃商品﹄だぞ ︕⼿を出すな﹂だが︑俺のそんな忠告など聞く⽿持たず︑覆⾯の男が振り上げたメイスを勢いよく俺のカバンへと叩きつける︒肩にかけていた紐が千切れて弁当が地⾯へ叩きつけられる︒
痛む肩を押さえつつ︑俺は無⾔を貫く覆⾯たちに問いかける︒
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﹁な︑﹃出る乳は揉まれる﹄て⾔葉を知てるか︖﹂
﹁……ヤシロ︒それはたぶん﹃出る杭は打たれる﹄﹂
マグダから冷静なツコミをもらう︒が︑ま ︑似たようなもんだ︒
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﹁あんまりはしぎ過ぎると︑⼿痛いしぺ返しを⾷らうぜ﹂
俺の⾔葉を聞き︑覆⾯の男が﹁ふふ……﹂と低く笑う︒そして︑ぶちまけられた弁当を六⼈全員で⼀⻫に踏みつけ︑踏みにじり︑踏みしだいた︒
﹁ふはははは ︕ざま みやがれ︕﹂
最後に⼀⾔だけ⾔葉を残し︑⾼笑いと共に覆⾯の男たちは踵を返して去 ていく︒
ま
またしても︑⾷い物を粗末にしやがて…………﹃商品﹄だ つたのによ︒
﹁お︑派⼿にやられたな﹂
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そんな⾔葉を⼝にしながら︑ウ セが街⾨の⽅向からやて来る︒今⽇はウ セも狩りに⾏くのだそうで︑いつもより物々しい装備に⾝を包んでいる︒
﹁……巨乳⼤好きウセ・ダマレ﹂
﹁おい︑テメ ︕マグダに何教えやがた!?﹂
カンバセ シヨン・レコド
﹁いや︑なに︒今⽇の﹃作戦﹄のためにち と﹃会話記録﹄を⾒せただけだよ﹂ぐぬぬと︑俺を睨むウセ︒その視線を⾜元へと誘導してやる︒
俺の⾜元には︑⾒るも無残な弁当の残骸が広がている︒
﹁﹃ご注⽂の品﹄が︑ご覧の有り様になちま たんだが……買い取てくれるか︖﹂
⾔いながら︑﹃売買許可証﹄を提⽰する︒ここでの販売は違法ではない︒
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﹁⼀つ1万Rbの︑陽だまり亭特製弁当︑⼗⼈前︒締めて10万Rbになるわけだが﹂
﹁ふざけんな︒こんなもんが⾷えるか︒﹃注⽂﹄はキンセルだ﹂
そう︒昨⽇こいつらに要請した﹃協⼒﹄とはこいつのことだ︒
今⽇狩りに出る狩猟ギルドのメンバ のために︑陽だまり亭は特製弁当を街⾨までデリバリしてきたのだ︒
陽だまり亭のような⾷堂は︑店内での販売は許可されているが︑今回のようなデリバリは許可されてはいない︒なので︑昨⽇のうちにエステラに事情を説明してわざわざ⼀回限りの﹃売買許可証﹄を⼿に⼊れてもらたのだ︒超特急でな︒
つまり︑この弁当は陽だまり亭の正式な﹃商品﹄ということになる︒デリバリ料⾦も含めて︑ち と割⾼になたその﹃商品﹄を︑覆⾯の男たちは台無しにした︒俺が親切に﹃こいつは商品なんだ﹄と教えてやたにもかかわらず︑だ︒
﹁犯⼈を⾒つけたら︑きちり﹃賠償﹄させなきいけないよな﹂
﹁ふん︒茶番の好きなヤツだぜ﹂
肩をすくめてやれやれと息を吐くウセ︒お前だて共犯だ つうの︒
﹁じ あ︑あとは好きにやれや﹂
それだけ⾔うと︑ウセは街⾨へと向かて歩き出した︒
期⽇に関して⾔及しなかたのは︑今⽇でケリがつくと分かているからだろう︒
⽜飼いへの賠償は︑この弁当の残骸がきちりカタを付けてくれる︒
﹁それじ︑⾏くとするか﹂
上⼿く⾔い逃れを画策してんだろうが︑相⼿が悪かたな︒
﹁⾷い物を粗末にする⼤バカ者どものせいで被た損害の賠償を取り⽴てにな﹂
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散らばた弁当を搔き集めて︑俺たちは四⼗⼆区へと引き返した︒
